家族信託は認知症の程度によって契約できなくなる!その程度とは?

生前整理
スポンサーリンク

自分が認知症になる前に家族信託をしておきたい
どの程度の認知症なら家族信託ができるのか知っておきたい
家族信託って具体的にどうやって手続きすればいいのかな?

資産の管理や譲渡、介護に関すること、事業継承など、歳を取るにつれて考えておかないとダメな事は増えてきます。
70歳、80歳になると一気に認知症が進むケースが多く、大切なことを身内に全く伝えられないまま要介護状態に…。
意識がハッキリしている間に「家族信託」で、自分の意思を伝えておきましょう。

このページでは「家族信託」ができるのはどのレベルの痴呆症までなのか?という線引きと、実際に家族信託を使うときの手続き方法・手順を詳しく説明していきます。

スポンサーリンク

家族信託ができる認知症の程度はかなりぼんやりとした線引きしかない

家族信託は契約行為になるため、利用できるかは当事者の判断能力がどれくらいあるかにより判断されます。
「認知症」と一言でいっても、少しおかしいな?と異変を感じる程度から、自分のことが誰なのかわからないといったように、その症状は幅広いものがあります。
自分のことが誰なのか分からないほど認知症が進んでいる場合、財産管理を自分で行うことができないので家族信託も当然、利用できません。

■軽度認知症ならまだ家族信託はできる
一般的に家族信託ができると言われているのは、認知症の中でも軽度認知症(MCI)と呼ばれている段階で、

  • 全体的な認知機能や日常活動は正常
  • 記憶障害の訴えや自覚が本人、または家族から認められている
  • 年齢に比べると記憶力は低下しているが、認知症ではない

といった項目が、判断基準になります。

認知症の程度が進んでも家族信託できるケースはあるが実際は厳しい

家族信託は自身の財産をどのように管理していくかを決める契約のため、自身の意思がコロコロと変化してしまう可能性が高い認知症と病院で判断されてしまうと、契約が難しくなります。
認知症と診断されていても、家族信託の契約時の審査のときに本人に十分な理解能力があると判断されれば契約自体はできますが、それはごく稀です。

認知症は病状が突然変化することが多いため、家族信託を検討している場合は最低でも軽度認知症の状態で契約できるよう、早めに手続きを進めておきましょう。

家族信託の具体的な手続き方法と注意点

◇家族信託の手続き方法

1.何のために家族信託を行うのか?と目的を考える
ここでは『自分が高齢で認知症になったときに、適切に財産を活用してほしい』といった目的で家族信託をご紹介していますが、家族信託を利用する人の目的はそれぞれ。

・自分の将来を考え、家族のため元気な間に財産を残しておきたい
・認知症の妻のために、後見人をつけなくても良いように財産を残しておきたい

といったように、自分がどのような目的で家族信託を行うのか、といったことを明確にしておきましょう。

2.家族信託の契約内容を決める
目的がハッキリと決まったところで、その目的をクリアできるような契約内容を考えていきます。
このとき最低限決めておきたい項目が、

・信託目的…家族信託で財産管理を行おうとしている目的。
・委託者…財産を預ける人(現在財産を所有している人)。
・受託者…財産を預かり管理する人。
・受益者…信託財産で実際に経済的な利益が受け取れる人。
・第二受託者…何らかの事情で、当初定められた受託者が財産管理できない状態になったときに、次に財産管理を行う人。
・第二受益者…受益者が死亡した場合、次に信託財産で利益が得られる人。
・信託財産…家族信託で預ける財産(現金や不動産・未上場株が主)。
・信託期間…家族信託を継続する期間。一般的に〇年と決めるか、受益者が死亡するまでとするかのどちらか。
・残余財産の帰属先…家族信託が終了したときに、財産を取得できる人。
相続人を複数指定することもでき、この時点で決断できない場合は『相続人で協議する』としても良い。

上記の9項目です。
家族信託の内容は、家族信託コーディネーターといった専門家と相談して決めていくこともできます。

3.契約書を作成する
契約内容を契約書として作成し、さらにそれを公正証書にしましょう。
家族信託の場合、絶対に公正証書にしなくてはいけないというわけではありませんが、以下のメリットがあるため、できる限り公正証書にすることをおすすめします。

・公証人が確認してくれるため、意味が通じない・誤字脱字の心配がない
・本人と公証人が面談し意思確認をしてくれるため、後日トラブルになりにくくなる
・万が一契約書を紛失しても、再発行してくれる(原則20年間)
・家族信託の口座開設が金融機関でスムーズにできる

公正証書の作成は以下の書類が必要になるので、忘れずに用意しておきましょう。
・委託者と受託者の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたもの)
・委託者と受託者、それぞれの実印
・信託する財産の資料(銀行預貯金通帳・固定資産評価証明書・不動産登記事項証明書など)
・親族関係を証明するための戸籍謄本

4.不動産登記の名義変更をする
家族や親族が財産管理を任せられたことを第三者に示すために、すぐに不動産登記の名義変更をしておきましょう。
この手続きは非常に困難なため司法書士に依頼することをおすすめしますが、変更手続きには以下の書類が必要になるため、しっかりと用意しておきましょう。
・委託者の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行のもの)・実印
・受託者の実印・認印・住民票
・固定資産評価証明書
・登記済権利証書(登記識別情報通知書)

5.家族信託専用の口座を開設し、送金しておく
受託者は自分の財産と信託財産を別に管理しなくてはいけないため、現金や預貯金が信託財産に含まれている場合は、すぐに信託専用の口座を開設しましょう。
信託用の口座なので
『委託者 〇〇 信託受託者 〇〇 信託口』
といった名義で開設できるのがベストですが、金融機関によって対応していないところがあるので事前に確認しておきましょう。
このときに公正証書があると、比較的スムーズに口座開設ができます。

上記の信託口口座が開設できない場合は、受託者名義の普通預金口座を事前に開設し、契約書にはその口座番号を「信託専用口座」として記載すれば問題ありません。

◇家族信託の注意点

1.遺言書ではないので、認知や相続権を奪うことはできない
家族信託は遺言書ではないので、子どもの認知や推定相続人から相続権を奪う、といったことはできません。
そのため、認知や相続人の廃除や改めて相続権を与えたい、といった場合は遺言書を作成する必要があります。

2.身上監護権はない
家族信託はあくまで財産管理を目的とした契約のため、日常での身の回りの世話(身上監護)をすることはできません。
そのため、将来本人の代わりに老人ホームへの入所契約や入院手続きができない可能性があります。
身の回りの世話もお願いしたい場合は、成年後見人制度を併用することをおすすめします。

3.家族信託の専門家が少ない
家族信託はまだまだ一般的に普及していないため、弁護士や司法書士でも精通している人は多くありません。
専門家に相談するときは必ず、実績を確認したり実際に利用した人の評判を参考に選ぶようにしましょうね。

家族信託には贈与税がかからないメリットがある

今まで、不動産の管理を自分以外の人物に引き継がせるには生前贈与が主流で、多額の贈与税だけでなく不動産取得税や税理士への依頼報酬など、多くの金額負担が発生していました。

生前贈与と比べると家族信託は、不動産を管理する権利のみを移すだけなので、贈与税は発生しません。
登録免許税は発生しますが

生前贈与の課税2%→家族信託の課税0.4%

と5分の1の負担で済み、不動産取得税も発生しなく全体的な出費を抑えられると最近では、家族信託に注目が集まってきています。

認知症が進むと家族信託ではなく成年後見制度を使うことになる

家族信託は『認知症への備え』、成年後見制度は『判断能力が低下した人をサポートするため』と、目的が異なります。
それぞれのメリット・デメリットは次のとおり。

◇家族信託
家族信託は、『自分が信頼できる家族に財産を託し契約した内容に沿って、財産を管理・運用・処分してもらうこと』で、この家族には血縁関係はないが家族同然の付き合いの人も含まれています。

◎メリット
・裁判所への報告なしで家族が確実に財産管理できるため、本人の財産が守られやすい
・遺言ではできない生前の財産管理や、2代先の相続方法(自分の財産を妻、妻が亡くなったらその財産を孫)まで指定ができる
・親の財産を簡単に管理でき、相続争いも防げる

◎デメリット
・身上監護がない
・専門家がまだ少なく、相談先が限られてしまう

◇成年後見制度
成年後見制度(法定後見制度)は、主に認知症で判断能力が低下した人に家庭裁判所が選任した後見人が、生活サポートをしていく制度です。
公共料金の支払いや金融機関との取引といった財産管理や、入院手続きや介護サービスの利用といった生活面でのサポート(身上監護)が主です。

◎メリット
・判断能力が低下し本人だけでおこなえない契約(生活に必要なお金の管理・敬語施設の契約など)や、本人の生活を見守ってもらえ安心できる
・万が一詐欺で不正な契約をしても、成年後見人が契約の取り消しを行える

◎デメリット
・家族が本人の財産に手を出せなくなる
・専門家以外が成年後見人になると負担が大きく、依頼した場合も報酬が発生する
・成年後見人の選任が希望通りにいかなかったと理由では、取り下げは認められない

まずは自分の認知度レベルを知って早めに家族信託の手続きを

家族信託は自分の財産を家族に預け管理を任せる制度で、医師から認知症と判断されてしまうと契約の締結が難しくなります。
自己判断ができる軽度認知症(MCI)であれば、契約できる可能性が高いのでまずは自分がどの程度の認知症レベルかを知ることが大切です。

家族信託の手続きは、以下の手順です。

  1. 家族信託を行う目的を考える
  2. 目的を達成できる契約内容を決めていく
  3. 契約書(できれば公正証書も)を作成
  4. 不動産登記の名義変更をする
  5. 専用の口座を開設し、送金しておく

家族信託には身上監護がなく、専門家が少ないため相談先が限られてしまうというデメリットもありますが、家族が財産管理をしていくため柔軟に対応できるといったメリットがあります。
家族信託の契約をするのであれば、認知症の症状と相談し、早めに手続きを進めていきましょうね。